アイス改造日記

イタリアンスクーターのチョイノリと言っても過言ではないPIAGGIOアイス50をチューニングしました。
メニューとしては

1.マロッシシリンダーMHRrep
2.マロッシMHRチャンバー
3.駆動系交換
4.PWK28換装

大まかなチューニングメニューとして上記4項目を行いました。
オーナーはスクーターに関し全くの知識がなかった為、本人が理想とする最終形だけを聞いた上で当メニューでカスタムに試みました。

本人曰くとにかく遅い(最高速度約50k)アイスを何とか人並みに走らせたいと、速さを求めるのならば全てを妥協するとのことでしたのでチャンバー、パワフィル仕様にする事に決め、それに合わせて部品をチョイスしました。

まずは改造前に絶対的に必要になるタコメーターの装着実施。
これは改造だけでなく微妙なセッティング変化や調子の変化の激しいカスタム車には絶対的に必要アイテムです。
確かにノーマル車にはそれ程必要性を感じないかもしれませんが少しでもカスタムを試みる予定の人は一番最初につけておくとその後のカスタム変化に大きく役立ちます。今回装着したタコはアクティブ製のデジタルタコを装着しました。同時に少しでも正確なスピードを確認したいと言う本人の希望で同メーカーのスピード計も同時装着!

さて、本当に遅いこのアイスを何処からカスタムしていくかと考えた末に、まずはセンターボスに装着されているカラーの脱着から!これはお金が掛からず、免許によって速度制限の有るヨーロッパに対応させる為のリミッターみたいな物です。ヤマハ系などのワッシャーとはちょっと違って、バリエーターとハーフプーリーの間にあからさまに装着されており、プーリーの移動を制限しています。この為、プーリーが2/3ほどしか使えず、結果50kぐらいしか出ないようになっています。このカラーを取り外す事によっておよそ70kぐらいまで出るようになりました。

ここからは本格的なチューニングに着手です。カスタムの基本はまず、最終的にどのようなバイクにしたいかをきちんと決めておくことが無駄な時間とお金を掛けない最も賢いやり方です。しかし、意外にも行き当たりばったりのカスタムで後戻りカスタムやチグハグな組み合わせで性能発揮が出来ていないバイクがかなり多いですね!特にスクーターは給排気、駆動系、エンジン特性がすべてリンクしたオートマチックな乗り物なので一つ何かをやって良くなるような甘い物ではないです。当たり前ですが、コストパホーマンスの高いところからやっていくのが基本ですね!

1.マロッシMHRrepシリンダー装着(68cc化)
そんなところで絶対的に性能変化を望めるボアアップからやる事にしました。これは費用的に約5万円と高価ですが、性能アップは大変大きく、コストパフォーマンスで考慮すると一番高いのでは!
結果装着のみで90kオーバーを達成!最高速度だけではなく、トルクも上がり加速も激変。
しかし、ここで注意したいのはシリンダーの選択です。今回はアルミシリンダーを装着したのですが、この他にもっと安い鉄シリンダーが存在しますが、ポート形状や大きさが全く違って性能も全く違います。今後MHRチャンバーなどを装着予定なのでなお更その後の影響も大きくなると予測したのでMHRrepを選択しました。更にハイエンドなMHRシリンダーも有りますがストリート走行を考慮すると耐久性などの面でrepがベストですね!・・・ここで鉄シリを選択するとその後にチャンバー装着してもその威力が発揮出来ないでしょう?

2.チャンバー装着
シリンダー交換の後は駆動系に着手予定でした。しかしながらオーナーの強い要望でチャンバー交換をする事に・・・
ノーマルの小さなキャブとノーマル駆動系でチャンバーが対応する事がないと説明をしたのですが、見た目に惹かれるオーナーがどうしてもと言った為、これも良い勉強になるだろうと判断し、オーナーの希望通りチャンバー装着を・・・・
結果、低回転はスカスカ、高回転はキャブと駆動系が対応していない為、ノーマルマフラーよりも伸びず加速も最高速度も落ちてしまいオーナーはガッカリ・・・笑 当方などからすればこれは最初から判っていた結果なので心配する事無いと説明をしその後の駆動系交換に・・・・
ここで選択したチャンバーはマロッシを選択したのですが、絶対的な性能を目指すにはこれが安全パイかと?
この他にも色々有りますがこの時点でそこそこ走るような物を付けてしまっては最終的に役不足になってしまいますので迷わずMHRチャンバーを選択しました。ここで補足ですが、スクーターの場合チャンバーやマフラーはノーマルポン付け対応なんて絶対に有り得ないのでその辺をきちんと理解しておく事が大切です!マフラー交換をした場合パワーバンドが変り、それに合わせた変速タイミングにしなければならないので駆動系再セットは必須です。もしもノーマルのまま普通に走るようならば、それはノーマルと性能がなんら変らないマフラーと言って良いでしょう!素人の方はこのポン付けなんてありえないうたい文句に騙される人が結構居るんですよね!勿論性能が同じならばありえる話ですが・・・・
単車のマフラー交換とは訳が違い、スクーターの場合は排気変更で吸気から駆動系まで全てを見直すので一番高度なカスタム箇所なんですよね!中途半端にギヤ車の経験が有る人はその辺の大きな過ちに陥ってる人が多いようです。また、高性能なチャンバーこそノーマル状態にポン付けすると走らなくなる物なんです!これは当たり前ですが、ノーマルとかけ離れた回転設定になっているからで、他をそのチャンバーに合わせてセットした時は物凄い性能を発揮し、特に2stはチャンバーの性能に大きく左右されます!ですから今回は最終形を視野に入れMHRを選択したのです。・・・・最終的に一番の性能が発揮できればいいのですから!

3.駆動系交換
当方や社長の意見に反し、駆動系前にチャンバーを装着したオーナーでしたが、案の定下はスカスカ、上も回らず最高速度も80kに!オーナーはガックリ!・・・笑 ここで駆動系をセットすれば大丈夫ととりあえずは慰め、次のステップへと・・・ 
今回選択した駆動系は マロッシバリエーター、フライクラッチ、マロッシベルト、WINGクラッチベル を選択しました。
ここでクラッチをあえてデルタではなくフライにしたのはオーナーが最高速度を重視した為、慣性力を利用して速度を少しでも伸ばそうと言った目的でわざわざ重たいフライに決定!それにプラスしてハウジングもノーマルよりかなり重たいMHRのWINGベルに・・・
レスポンスを重視するのならば軽量なデルタを選択するのですが、高速側に設定するのならばこちらの方が好条件ですから。結果的に高速でのパワー&トルクはノーマルからは想像できないほどで、108kをマーク!出足も6000rpmクラッチインながらちょっとその気になればウィリーも・・・・ ただし、ノーマルの極小キャブではかなりの役不足で迷わずPWK28換装へとステップアップ!

4.PWK28換装
いよいよ最後のカスタム キャブ換装!
高回転チャンバーを装着した事でキャブは迷わずPWK28を選択。微妙なMJやPJを何回も交換したあげくやっとセット完了!
最高速度は2Kアップの110kジャスト。しかしながらそこまでの到達時間は圧倒的に速く、流石に国産高性能キャブです。しかしながら110kまですぐに行くにも関わらず、いきなり車速が止まるアイスの動きにちょっと疑問も?・・・もっと出てもいいはずではと?
最高速アタックの後に再度ケースを外し駆動系のチェックとプラグチェック。
ここで下記の画像のように面白い事を発見!

ちょっと画像悪くわかりづらいのですが、左がフロントプーリー側、右がリヤプーリー側です。
共に最高速度を出す前にベルトの移動位置を確認する為にフェイスにマジックチェックをしておきました。左のフロントプーリーはわざと判るようにプーリーの厚み部分の所にマジックで印してありますが、その位置のフェイス部分にマジックチェックしました。端まで全て消えており、フロント側は最大ギヤまでの移動を確認。リヤは同じく端に少し残っているところがマジックチェック部分ですが、奥の一番最小位置までチェックが消えていたのでとりあえず、現状での最高ギヤ比は使っていることが確認できました。
一応、最高速に対しては納得。しかしながらリヤプーリーの端にまだマジックが残っているのがチョイ納得できず今後の課題ですね?
しかし、現状でここの部分を消すようにするにはベルトを長くする事が考えられますが、最高ギヤ比時にフロント側が最大外周に達し、リヤは最小位置に現状落ち込んでいる為、その場合長くなった分リヤの落ち込みが甘くなり最高ギヤ比時にローギヤ化の発生が予測され、長くするのは最高速ダウンにつながるおそれがあるのでNGかもしれないですね?従ってセンターボスのロング化とその分のプーリーの移動を稼ぐ為にランププレートかプーリーのWR室などを加工してあげるのも良いかもしれないと思いました。

この駆動系チェックをした際に発見したのですが、ベルトがセルに干渉してしまって既にギヤ比上は限界位置!右上の画像で判りづらいのですがベルトの表面を良く見るとエンジン側の方にうっすらと線傷が入っているのがわかるでしょうか?実物ははっきりと傷付いているのですが画像が悪い為にちょっと確認しづらいですが・・・・ 
また左上の画像でも判るようにプーリーがセルギリギリになっています。しかし、駆動系もMHRのオーバーレンジがラインアップされているのでこちらに変更すればプーリーも大きくなり、ベルトも長くなってさらに最終ギヤ比のハイギヤ化が期待できるので今後装着してみたいパーツと思いました・・・セルは外さないと取り付かないのか定かではないですが?
ただし、このような現象が起きるのもMHRの高回転に強いチャンバーの為になるので、ノーマルマフラーやライトチューン用のチャンバーなどでは今回の駆動系で十分でしょう。今回のMHRチャンバーとREPシリンダーの組み合わせに対してはこの駆動系はちょっと役不足のような気も?スクーターを総合的にサポートするマロッシでは、MHRのチャンバーに対してはきちんとMHRの駆動系がマッチするのだと改めてピンポイントでパーツ販売している国産メーカーとの違いを感じさせられました。ただし、マロッシだからと言って全てが良いと言うわけでは無く、その辺の部品選定も経験と腕の差が現れるところです?やはり、チューニングをする際はそれなりの情報をベースにある程度理論を理解し自分で納得してやる事が良いバイク作りになると思います。何も理解せず他人の無責任な情報を鵜呑みにしてやるのは一番ナンセンスな事でしょう!インターネットの盛んな現代ではそういった人達が沢山見受けられますね。お店を選ぶ際も全く判らない一般ユーザーに対してそのような理論をきちんと説明して、お客さんが納得した上でカスタムしてくれるようなお店を探すと良いかもしれないですね?それなりの持論さえあれば、たとえ間違った理論でカスタムを進め失敗したとしてもそれが必ず経験値として無駄にはなりませんが、何も解らず他人の真似や情報だけでやったのでは失敗してもただ‘パーツが駄目だった‘で終わってしまいますからね!チューニングに失敗した時は必ずその原因を追究する事も大切な事ですよ?

オーリンズ装着

オーリンズ装着してみました。
元々長いサスのICEにはリプレイスさせるものが無い為、カラーをワンオフ製作して長さ調整をしました。
その為、車高は変わらず、ショック性能はノーマルとは明らかに違うほど変化が有りました。
性能も勿論ですが、50ccの原付にオーリンズはかなりのハッタリ物です。
最後に

今回のICEの変貌にはビックリしました。
あれだけ遅いバイクがこれほどまでに速くなるのにはちょっと驚きですね?
元々素質の有るもので、それをただ封印されていただけなのかもしれないですがこれだけ速くなれば問題ないですね!
また車重も軽く乗りやすいので峠であれば十分ランナーもカモれるでしょう?
勿論街中ではおつりがくるだけの速さがありますね!
ただ、レブリミッターの確認はしていないのですが、これ以上回転で速度を伸ばすには水冷化が必要でしょうね?
街乗りの実用的な範囲ではこの辺が限界という感じも受けられましたが、更にポート加工や駆動系加工などのオリジナルの手を使えば更に速くする事が可能でしょう?
しかし、速くても壊れてしまっては意味がないので、今後は‘壊れない化‘の改造も必要ですね?
勿論この状態でもベルトやWR、エアクリなどの消耗パーツは2000kともたないでしょう?
一応本人は今後120kを目標に頑張るとの事でした!・・・・恐るべきイタリアンチョイノリですね・・・笑
本人は今の所大満足の御様子です!
今から予備にシリンダーも用意しておくと、かなり気合が入っていましたが、その時は水冷のシリンダーを購入するのが良いかもしれないですね?